OneNightのつもりがハマった話
ーある日6人のおじさんを好きになったんだー
ワタシ、27歳、ジャニオタ。
日中は至って真面目な会社員。
アイドルは年下を愛でるのが、青く儚く成長していく姿を見るのがすき。
だから普段は一生懸命Jr.担をして夢見て泣いて笑っている。
そんなワタシが、ある日6人のおじさんを好きになった話。
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「V6」-ブイシックス
まるで生まれる前から脳に埋め込まれていたかのように、モノゴコロつく頃にはこの単語を知っていた。
夜空には星が散りばめられているように、ワタシの生きる世界にはV6がいた。
4歳のワタシは、習い事のオルガン教室でかの名曲「WAになっておどろう」を覚えた。
なんてキャッチーで楽しい曲なのだろう。全人類が知っているわけだ。
火曜の夜は伊東家の食卓。みんな大好き、かっこいいお兄ちゃんの三宅くんがいた。
森田剛はちょっと怖かった。怖い・・・というと語弊があるが、遠くからただ見るだけにしておきたい「イカツイにーちゃん」だった。
「イノッチ」はそこらじゅうにいた。「アンパンマン」くらいどこにでも普通にいた。
岡田君はスクリーンの向こう側によくいて、走って戦う超人類。誰もが認めるプロの俳優。
もちろん坂本君も長野君も当たり前に知っていた。
嘘をついても仕方がないので正直に言うが、坂本君のことは「おじさん」としか思ったことがなかった(一方、長野君は顔が超超どタイプで恋に落ちそうになったことがあったが、それを誰にも言ったことがなかった。今思えば、本物の恋心っぽくて言えなかったのだろう)。
・・・そういうことで、V6はいることが当たり前、曲も流れれば口ずさめる。
ワタシにとって、そんなグループだった。
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・・・時は2020年。オリンピックのはずだった。
こんな世界を誰が想像しただろう。
新型コロナウィルス感染症が猛威を振るい、世界からエンターテインメントが消えつつあった。
コンサートは中止の嵐。ジャニオタにとっては過酷で残酷な試練の日々だ。
「4月も5月もハッピーな日々のはずだったのに・・・」
平凡だと思い込んでいた愛すべき未来が、当たり前にはやって来ない。
そんな現実に、崩れ落ちる。
ワタシの担当が属するTravisJapanだって、初めてのツアーのはずだった。
みんながとても楽しみにしていた。彼らのことを想うと心がキュッと傷む。
そんな彼らは前を向こうと励ましてくれたけど、ワタシは向き合えなかった。
未来を向けないワタシは、過去に縋り、思い出に浸ることを選んだ。
YouTubeのページを開き、ある曲を検索する。彼らが夏のコンサートで披露した一曲。
贅沢なことに、MVがあがっていた。
― キラキラ、雨粒みたいに飛び交い 闇夜に消える火花のよう 永遠なんかにキョーミはないけど泣いたのさ・・・
「・・・かっこいい・・・」
キラキラ輝いていたのは、雨粒でも火花でもなく、こどもの頃から知っていた、あのV6。
夏を回顧しに行ったはずが、彼らの眩しさにやられていた。
新しい世界に飛び込んだような気がした。
でも、あれ・・・?
ワタシが好きなのは、若い子たちが魅せる一瞬のキラキラなんじゃないんだっけ?
・・・年上にハマったことのなかったワタシは、些かの違和感を感じながらも、儚さも煌びやかさも放つそのRaysに引き込まれていった。
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次の日から通勤のバスでは毎日MVを見た。
ハマるとその一曲をエンドレスリピート派のワタシ。CrazyRaysに合わせて肩が揺れる。
永遠に見ていられるような気がした。
ある日、【もう1回見る】ボタンを押しそびれた。
「戻さなきゃ」
急いだ指がボタンに触れるのを待たずに画面は移る。
・・・目に飛び込んできたのは、6人の優しい顔がこちらを覗き込む姿。
「え、かわいい・・・」
そして、それと同時に鳴り始めたなんとも不思議で、しかし居心地のよいメロディが、ワタシを引き留める。
戻るボタンを押す選択肢は消えていた。
「ワタシ、V6の曲がハマるのかもしれない。この曲、ドツボだ・・・」
しかし、ツボにハマるのは音楽的なことに留まらない。
「焼きたてのふわふわ巨大食パンのベッドで寝たい」
?????
なんて夢のような、ファンタジーな世界なの?
思わずクスッとしてしまう。幸せを感じる。
それは、画面の向こうでも同じようだった。ひとつひとつの夢を見守る彼らの表情が、あまりにも言い表せないくらい優しくて儚くて・・・
なんだか守りたい、愛したいと思った。
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金曜日の夜。
やっと1週間が終わった。お疲れワタシ。
帰宅したアパートでダラダラしながらスマホの液晶を眺める。
すると、ある情報が目に入った。
「セクバニコン・・・」
V6をよく知らないワタシでも耳にしたことがあるワード「セクバニ」。なんかヤバイヤツであることも知っていた。でもなんのことだかよくわからない。どっちだよ。
・・・とりあえず、日曜日の16時からは予定を空けておこう。
手帳が空白だった週末、コンサートに行く予定ができて嬉しかった。
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日曜日。
開演(気持ちは完全にコンサート)の時間に合わせ、普段やらないような掃除にも身が入る。
月曜からの出勤に向けて弁当の作り置きも完璧。
サザエさん症候群だって怖くない。
16時00分・・・始まった。
静かに、厳かに、しかしヤバイ何かが始まることを感じさせるオープニング。
しばらくして、最初に歌声を発したのは「イカツイにーちゃん」こと森田剛。
甘い・・・甘すぎる・・・
本当にこの人から発せられている声なのだろうか?と疑った。
そして魅せる表情がなんとも美しく儚い。
これが、イカツイにーちゃん・・・?
そんなお茶の間を待たずに、「セクバニコン」はどんどんと展開されていく。
とにかく、楽曲がワタシのツボにハマる。
かっこいいんだな。
きました、Sexy.Honey.Bunny!
これか。セクバニ。こりゃあいい。これはみんなが好きだ。ん~~~Sexy!
そして、あの優男がかっこいい。
元彼を想うかのように、謎の背徳感とともにまた恋をする。
甘いマスクに甘い歌声。
もう自分に嘘はつかないよ。長野君のことが好きです。
続いて、「官尾」。
歌詞は知らないが、初見でヤバイとわかるくらいヤバイ(後に「官能的な交尾」の略であると知る)(え、その解釈で合ってますか?)(違ったらとても恥ずかしい)
あ~、そうそうこれが森田剛。イカツイにーちゃんはこういうイメージだよ!!と思っていられたのも束の間。
なんなんだこの演出は・・・?神すぎる!!!
語彙力がなくてすみません。でも、だって、神なんだもん。
電球を、掴んで揺らす・・・?スモークも照明も、すべて操られている。森田剛さんが操っている。
聞き心地の良い甘い歌声に、めくるめく変わっていくBpmとコード。どんどんどんどん引き込まれる。
あの日あの時あの場所は、横浜アリーナではなく、完全に森田剛の創り出す世界だった。
オトナの魅力とは、余裕とは、こういうことなのか・・・と思わされる。
・・・そんなこんなでオトナの世界の余韻から抜け出せずにいたら、今度はなんだかものすごくキュートでプリティでハッピーな歌が聞こえてくる。
あれ?ここはどこだっけ?遊園地にでも来たのかな? と言わんばかりの多幸感。
それが、聞いてびっくり見てびっくり。
なんとあの「おじさん」としか思ったことのなかった坂本くんのソロ曲だったんだぜ・・・?
両脇に息子を連れて歩くお父さん。安心感に、父性に、逞しさに溢れている。
なのに、どうして?
可愛くて仕方がない・・・
そうしているうちに長野君とイノッチが入ってくる。息子が4人に増える。あ~あ~・・・可愛いの渋滞だよ・・・・・・
・・・可愛いを何乗したのだろう。
HappyHappyBirthday!が終わる頃には情報が多すぎて処理しきれず、リセットさえできない頭になっていた。
そこから沼に落ちるのは容易だった。
全曲がかっこいい!かわいい!好き!良い!のどれかに必ず当てはまった。
担当ではないグループのセットリストをこんなに楽しめることが、ワタシにとっては珍しいことだった。そして、それがまた嬉しかった。
知っている曲が多かったのもあるかもしれない。
それも、ジャニーズJr.はよくV6の曲をカバーしているからだ。スパノバことsupernovaもその一つ。TravisJapanもコンサートでやってくれていた。
しかし、本家の披露するsupernovaはまっっったくの別物だった。
たったのポール一本で、決して多くはない体の動きで、火照ったカラダと愛したい欲望、抑えきれない情熱をあれだけ表現することができますか・・・?
どれもこれも、本当に目が離せなかった。
本編を終え、アンコール(本当はどれもこれも感想を綴りたいのだが、そうしていると10万年かかるので割愛)。
「まだやってくれるの?」「え、これも?あれも?!」
わんこそばのように次から次へとやってくる。
なんだこれ。楽しい。ハッピーでしかない。もうおなかいっぱいだ!!!それでも一緒に歌って踊っちゃう!!ここは横アリか!? Fu~~~~~!(下の階の人ごめんなさい)
もうボルテージは最高潮だぜ!!!
そんなときに流れてくる、本日2度目の「セクバニ」。
今度はワタシも
「オーエオエオー!」
一緒に歌う。体を揺らす。もうファンと名乗っても良いですか?
「・・・ワタシ、完全にV6にハマるな・・・」
そう確信した、まさにそのときその瞬間。
まるでワタシの気持ちを全肯定するかのように、彼らが歌い上げたのだ。
OneNightのつもりがハマる~Sexy!